- 原価計算基準の設定について
- 第1章 原価計算の目的と原価計算の一般的基準
- 第2章 実際原価の計算
- 第1節 製造原価要素の分類基準
- 第2節 原価の費目別分類
- 第3節 原価の部門別計算
- 第4節 原価の製品別計算
- 第5節 販売費および一般管理費の計算
- 第3章 標準原価の計算
- 第4章 原価差異の算定および分析
- 第5章 原価差異の会計処理
原価計算基準の設定について
わが国における原価計算は、従来、 財務諸表 を作成するに当たって 真実の原価 を正確に算定表示するとともに、 価格計算 に対して資料を提供することを主たる任務として成立し、発展してきた。
しかしながら、近時、 経営管理 のため、とくに 業務計画 および 原価管理 に役立つための原価計算への要請は、著しく強まってきており、今日、原価計算に対して与えられる目的は、単一ではない。
すなわち、企業の 原価計算制度 は、 真実の原価 を確定して 財務諸表 の作成に役立つとともに、原価を分析し、これを 経営管理者 に提供し、もって 業務計画 および 原価管理 に役立つことが必要とされている。したがって、 原価計算制度 は、各企業がそれに対して期待する役立ちの程度において重点の相違はあるが、いずれの計算目的にもともに役立つように形成され、一定の 計算秩序 として 常時継続的 に行なわれるものであることを要する。ここに原価計算に対して提起される諸目的を 調整 し、原価計算を制度化するため、 実践規範 としての原価計算基準が、設定される必要がある。
原価計算基準は、かかる 実践規範 として、わが国現在の企業における原価計算の 慣行 のうちから、一般に 公正妥当 と認められるところを 要約 して設定されたものである。
しかしながら、この基準は、個々の企業の原価計算手続を 画一 に規定するものではなく、個々の企業が有効な原価計算手続を規定し実施するための基本的な わく を明らかにしたものである。
したがって、企業が、その原価計算手続を規定するに当たっては、この基準が 弾力性 をもつものであることの理解のもとに、この基準にのっとり、業種、経営規模その他当該企業の個々の条件に応じて、 実情 に即するように適用されるべきものである。
この基準は、 企業会計原則 の一環を成し、そのうちとくに 原価 に関して規定したものである。それゆえ、すべての企業によって尊重されるべきであるとともに、たな卸資産の評価、原価差額の処理など企業の原価計算に関係ある事項について、 法令 の制定、改廃等が行なわれる場合にも、この基準が充分に しん酌 されることが要望される。
第1章 原価計算の目的と原価計算の一般的基準
1 原価計算の目的
原価計算には、各種の異なる目的が与えられるが、主たる目的は、次のとおりである。
(一)
企業の出資者、債権者、経営者等のために、過去の一定期間における損益ならびに期末における財政状態を 財務諸表 に表示するために必要な 真実の原価 を集計すること。
(二)
価格計算 に必要な原価資料を提供すること。
(三)
経営管理者 の各階層に対して、 原価管理 に必要な原価資料を提供すること。ここに 原価管理 とは、原価の標準を設定してこれを指示し、原価の実際の発生額を計算記録し、これを 標準 と比較して、その差異の原因を分析し、これに関する資料を 経営管理者 に報告し、 原価能率 を増進する措置を講ずることをいう。
(四)
予算の編成 ならびに 予算統制 のために必要な原価資料を提供すること。ここに予算とは、予算期間における企業の各業務分野の具体的な計画を 貨幣的 に表示し、これを総合編成したものをいい、予算期間における企業の 利益目標 を指示し、各業務分野の諸活動を 調整 し、企業全般にわたる 総合的管理 の要具となるものである。予算は、 業務執行 に関する総合的な 期間計画 であるが、予算編成の過程は、たとえば製品組合せの決定、部品を自製するか外注するかの決定等個々の 選択的事項 に関する 意思決定 を含むことは、いうまでもない。
(五)
経営の 基本計画 を設定するに当たり、これに必要な原価情報を提供すること。ここに 基本計画 とは、経済の動態的変化に適応して、経営の給付目的たる製品、経営立地、生産設備等 経営構造 に関する基本的事項について、 経営意思 を決定し、 経営構造 を合理的に 組成 することをいい、 随時的 に行なわれる決定である。
2 原価計算制度
この基準において原価計算とは、制度としての原価計算をいう。 原価計算制度 は 財務諸表 の作成、 原価管理 、 予算統制 等の異なる目的が、重点の相違はあるが相ともに達成されるべき一定の 計算秩序 である。かかるものとして 原価計算制度 は、 財務会計機構 のらち外において 随時断片的 に行なわれる原価の統計的、技術的計算ないし調査ではなくて、 財務会計機構 と 有機的 に結びつき 常時継続的 に行なわれる計算体系である。原価計算制度は、この意味で 原価会計 にほかならない。
原価計算制度 において計算される原価の種類およびこれと 財務会計機構 との結びつきは、単一ではないが、しかし 原価計算制度 を大別して 実際原価計算制度 と 標準原価計算制度 とに分類することができる。
実際原価計算制度 は、製品の実際原価を計算し、これを財務会計の主要帳簿に組み入れ、製品原価の計算と財務会計とが、実際原価をもって 有機的 に結合する 原価計算制度 である。 原価管理 上必要ある場合には、 実際原価計算制度 においても必要な原価の 標準 を 勘定組織 のわく外において設定し、これと実際との差異を 分析 し、 報告 することがある。
標準原価計算制度 は、製品の標準原価を計算し、これを財務会計の主要帳簿に組み入れ、製品原価の計算と財務会計とが、標準原価をもって 有機的 に結合する 原価計算制度 である。 標準原価計算制度 は、必要な計算段階において実際原価を計算し、これと標準との差異を 分析 し、 報告 する計算体系である。
企業が、この基準にのっとって、原価計算を実施するに当たっては、上述の意味における 実際原価計算制度 又は 標準原価計算制度 のいずれかを、当該企業が原価計算を行なう目的の重点、その他企業の個々の条件に応じて適用するものとする。
広い意味での原価の計算には、 原価計算制度 以外に、経営の 基本計画 および予算編成における 選択的事項 の決定に必要な特殊の原価たとえば 差額原価 、 機会原価 、付加原価等を、随時に統計的、技術的に調査測定することも含まれる。しかしかかる 特殊原価調査 は、制度としての原価計算の範囲外に属するものとして、この基準に含めない。
3 原価の本質
原価計算制度において、原価とは、経営における一定の 給付 にかかわらせて、は握された財貨又は用役(以下これを「財貨」という。)の消費を、貨幣価値的に表わしたものである。
(一)
原価は、経済 価値 の消費である。経営の活動は、一定の財貨を生産し販売することを目的とし、一定の財貨を作り出すために、必要な財貨すなわち経済 価値 を消費する過程である。原価とは、かかる経営過程における 価値 の消費を意味する。
(二)
原価は、経営において作り出された一定の 給付 に転嫁される価値であり、その 給付 にかかわらせて、は握されたものである。ここに 給付 とは、経営が作り出す財貨をいい、それは経営の最終給付のみでなく、 中間的給付 をも意味する。
(三)
原価は、 経営目的 に関連したものである。経営の目的は、一定の財貨を 生産 し 販売 することにあり、経営過程は、このための 価値 の消費と生成の過程である。原価は、かかる財貨の 生産 、 販売 に関して消費された経済 価値 であり、 経営目的 に関連しない価値の消費を含まない。 財務活動 は、財貨の生成および消費の過程たる経営過程以外の、資本の調達、返還、利益処分等の活動であり、したがってこれに関する費用たるいわゆる 財務費用 は、原則として原価を構成しない。
(四)
原価は、 正常 的なものである。原価は、 正常 な状態のもとにおける経営活動を前提として、は握された 価値 の消費であり、 異常な状態 を原因とする 価値 の減少を含まない。
4 原価の諸概念
原価計算制度においては、原価の本質的規定にしたがい、さらに各種の目的に規定されて、具体的には次のような諸種の原価概念が生ずる。
(一)
実際原価と標準原価
原価は、その 消費量 および価格の算定基準を異にするにしたがって、実際原価と標準原価とに区別される。
1
実際原価とは、財貨の 実際消費量 をもって計算した原価をいう。ただし、その 実際消費量 は、経営の 正常な状態 を前提とするものであり、したがって、 異常な状態 を原因とする異常な 消費量 は、実際原価の計算においてもこれを 実際消費量 と解さないものとする。
実際原価は、厳密には実際の 取得価格 をもって計算した原価の実際発生額であるが、原価を 予定価格 等をもって計算しても、 消費量 を実際によって計算する限り、それは実際原価の計算である。ここに 予定価格 とは、将来の一定期間における実際の 取得価格 を予想することによって定めた価格をいう。
2
標準原価とは、財貨の消費量を 科学的 、 統計的調査 に基づいて 能率の尺度 となるように予定し、かつ、 予定価格 又は 正常価格 をもって計算した原価をいう。この場合、 能率の尺度 としての標準とは、その標準が適用される期間において達成されるべき原価の 目標 を意味する。
標準原価計算制度において用いられる標準原価は、 現実的標準原価 又は 正常原価 である。
現実的標準原価 とは、 良好な能率 のもとにおいて、その達成が期待されうる標準原価をいい、通常生ずると認められる程度の減損、仕損、遊休時間等の 余裕率 を含む原価であり、かつ、比較的 短期 における 予定操業度 および 予定価格 を前提として決定され、これら諸条件の変化に伴い、しばしば 改訂 される標準原価である。 現実的標準原価 は、 原価管理 に最も適するのみでなく、 たな卸資産価額 の算定および 予算 の編成のためにも用いられる。
正常原価 とは、経営における 異常な状態 を排除し、経営活動に関する比較的 長期 にわたる過去の実際数値を統計的に 平準化 し、これに 将来のすう勢 を加味した 正常能率 、 正常操業度 および 正常価格 に基づいて決定される原価をいう。 正常原価 は、経済状態の安定している場合に、 たな卸資産価額 の算定のために最も適するのみでなく、 原価管理 のための標準としても用いられる。
標準原価として、実務上 予定原価 が意味される場合がある。 予定原価 とは、将来における財貨の予定消費量と予定価格とをもって計算した原価をいう。 予定原価 は、 予算の編成 に適するのみでなく、 原価管理 および たな卸資産価額 の算定のためにも用いられる。
原価管理 のために時として 理想標準原価 が用いられることがあるが、かかる標準原価は、この基準にいう制度としての標準原価ではない。 理想標準原価 とは、技術的に達成可能な最大操業度のもとにおいて、最高能率を表わす最低の原価をいい、財貨の消費における減損、仕損、遊休時間等に対する 余裕率 を許容しない理想的水準における標準原価である。
(二)
製品原価と期間原価
原価は、財務諸表上収益との対応関係に基づいて、 製品原価 と 期間原価 とに区別される。
製品原価 とは、一定単位の製品に集計された原価をいい、 期間原価 とは、一定期間における発生額を、当期の収益に直接対応させて、は握した原価をいう。
製品原価 と 期間原価 との範囲の区別は相対的であるが、通常、売上品およびたな卸資産の価額を構成する 全部の製造原価 を製品原価とし、販売費および一般管理費は、これを 期間原価 とする。
(三)
全部原価と部分原価
原価は、集計される原価の範囲によって、 全部原価 と 部分原価 とに区別される。 全部原価 とは、一定の給付に対して生ずる全部の製造原価又はこれに販売費および一般管理費を加えて集計したものをいい、 部分原価 とは、そのうち一部分のみを集計したものをいう。
部分原価 は、計算目的によって各種のものを計算することができるが、最も重要な 部分原価 は、変動直接費および変動間接費のみを集計した 直接原価(変動原価) である。
5 非原価項目
非原価項目とは、原価計算制度において、原価に算入しない項目をいい、おおむね次のような項目である。
(一)
経営目的 に関連しない価値の減少、たとえば
1
次の資産に関する減価償却費、管理費、租税等の費用
(1)
投資資産たる不動産、有価証券、貸付金等
(2)
未稼働の固定資産
(3)
長期にわたり休止 している設備
(4)
その他経営目的に関連しない資産
2
寄附金等であって経営目的に関連しない支出
3
支払利息、割引料、社債発行割引料償却、社債発行費償却、株式発行費償却、設立費償却、開業費償却、支払保険料等の財務費用
(二)
異常な状態 を原因とする価値の減少、たとえば
1
異常 な仕損、減損、たな卸減耗等
2
火災、震災、風水害、盗難、争議等の 偶発的事故 による損失
3
予期し得ない陳腐化等によって固定資産に著しい減価を生じた場合の臨時償却費
4
延滞償金、違約金、罰課金、損害賠償金
5
偶発債務損失
6
訴訟費
7
臨時多額の退職手当
8
固定資産売却損および除却損
9
異常な貸倒損失
(三)
税法上とくに認められている損失算入項目、たとえば
1
価格変動準備金繰入額
2
租税特別措置法による償却額のうち通常の償却範囲額をこえる額
(四)
その他の利益剰余金に課する項目、たとえば
1
法人税 、所得税、都道府県民税、市町村民税
2
配当金
3
役員賞与金
4
任意積立金繰入額
5
建設利息消却
6 原価計算の一般的基準
原価計算制度においては、次の 一般的基準 にしたがって原価を計算する。
(一)
財務諸表の作成に役立つために、
1
原価計算は原価を一定の 給付 にかかわらせて集計し、 製品原価 および 期間原価 を計算する。すなわち、原価計算は原則として
(1)
すべての 製造原価 要素を製品に集計し、損益計算書上の売上品の 製造原価 を売上高に対応させ、貸借対照表上仕掛品、半製品、製品等の製造原価を たな卸資産 として計上することを可能にさせ、
(2)
また、販売費および一般管理費を計算し、これを損益計算書上 期間原価 として当該期間の 売上高 に対応させる。
2
原価の数値は、財務会計の原始記録、信頼しうる統計資料等によって、その 信ぴょう性 が確保されるものでなければならない。このため原価計算は、原則として 実際原価 を計算する。この場合 実際原価 を計算することは、必ずしも原価を 取得価格 をもって計算することを意味しないで、 予定価格 等をもって計算することもできる。また必要ある場合には、製品原価を 標準原価 をもって計算し、これを 財務諸表 に提供することもできる。
3
原価計算において、原価を 予定価格 等又は 標準原価 をもって計算する場合には、これと原価の 実際発生額 との差異は、これを 財務会計 上適正に処理しなければならない。
4
原価計算は、 財務会計 機構と 有機的 に結合して行なわれるものとする。このために 勘定組織 には、原価に関する 細分記録 を統括する諸勘定を設ける。
(二)
原価管理に役立つために、
5
原価計算は、経営における 管理の権限 と 責任の委譲 を前提とし、作業区分等に基づく 部門 を 管理責任 の区分とし、各 部門 における作業の原価を計算し、各管理区分における原価発生の 責任 を明らかにさせる。
6
原価計算は、原価要素を、機能別に、また直接費と間接費、固定費と変動費、 管理可能費 と 管理不能費 の区分に基づいて分類し、計算する。
7
原価計算は、原価の 標準の設定 、 指示 から原価の 報告 に至るまでのすべての計算過程を通じて、原価の 物量 を測定表示することに重点をおく。
8
原価の標準は、原価発生の 責任 を明らかにし、 原価能率 を判定する尺度として、これを設定する。原価の標準は、過去の 実際原価 をもってすることができるが、理想的には、 標準原価 として設定する。
9
原価計算は、原価の 実績 を、標準と対照比較しうるように計算記録する。
10
原価の標準と 実績 との差異は、これを 分析 し、 報告 する。
11
原価計算は、 原価管理 の必要性に応じて、重点的、経済的に、かつ、迅速にこれを行なう。
(三)
予算 とくに費用 予算 の編成ならびに 予算統制 に役立つために、
12
原価計算は、 予算 期間において期待されうる条件に基づく 予定原価 又は 標準原価 を計算し、 予算 とくに、費用 予算 の編成に資料を提供するとともに、 予算 と対照比較しうるように原価の 実績 を計算し、もって 予算統制 に資料を提供する。
第2章 実際原価の計算
7 実際原価の計算手続き
実際原価の計算においては、製造原価は、原則として、その実際発生額を、まず 費目別 に計算し、次いで 原価部門別 に計算し、最後に 製品別 に集計する。販売費および一般管理費は、原則として、一定期間における実際発生額を、 費目別 に計算する。
第1節 製造原価要素の分類基準
8 製造原価要素の分類基準
原価要素は、 製造原価 要素と 販売費および一般管理費 の要素に分類する。
製造原価要素を分類する基準は次のようである。
(一)
形態別分類
形態別分類とは、 財務会計 における費用の発生を基礎とする分類、すなわち 原価発生の形態 による分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを材料費、労務費および経費に属する各費目に分類する。
材料費とは、 物品の消費 によって生ずる原価をいい、おおむね次のように細分する。
1
素材費(又は原料費)
2
買入部品費
3
燃料費
4
工場消耗品費
5
消耗工具器具備品費
労務費とは、 労務用役の消費 によって生ずる原価をいい、おおむね次のように細分する。
1
賃金(基本給のほか割増賃金を含む)
2
給料
3
雑給
4
従業員賞与手当
5
退職給与引当金繰入額
6
福利費(健康保険料負担金等)
経費とは、 材料費、労務費以外 の原価要素をいい、減価償却費、たな卸減耗費および福利施設負担額、賃借料、修繕料、電力料、旅費交通費等の諸支払経費に細分する。
原価要素の形態別分類は、 財務会計 における費用の発生を基礎とする分類であるから、原価計算は、 財務会計 から原価に関するこの形態別分類による基礎資料を受け取り、これに基づいて原価を計算する。この意味でこの分類は、原価に関する 基礎的分類 であり、原価計算と 財務会計 との関連上重要である。
(二)
機能別分類
機能別分類とは、原価が経営上のいかなる 機能 のために発生したかによる分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを 機能 別に分類する。この分類基準によれば、たとえば、材料費は、主要材料費、および修繕材料費、試験研究材料費等の補助材料費、ならびに工場消耗品費等に、賃金は、作業種類別直接賃金、間接作業賃金、手待賃金等に、経費は、各部門の機能別経費に分類する。
(三)
製品との関連における分類
製品との関連における分類とは、製品に対する原価発生の態様、すなわち原価の発生が一定単位の 製品 の生成に関して 直接的 に認識されるかどうかの性質上の区別による分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを 直接費 と 間接費 とに分類する。
1
直接費 は、これを直接材料費、直接労務費および直接経費に分類し、さらに適当に細分する。
2
間接費 は、これを間接材料費、間接労務費および間接経費に分類し、さらに適当に細分する。
必要ある場合には、直接労務費と製造間接費とを合わせ、又は直接材料費以外の原価要素を総括して、これを 加工費 として分類することができる。
(四)
操業度との関連における分類
操業度との関連における分類とは、 操業度 の増減に対する原価発生の態様による分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを 固定費 と 変動費 とに分類する。ここに操業度とは、 生産設備を一定 とした場合におけるその 利用度 をいう。 固定費 とは、 操業度 の増減にかかわらず変化しない原価要素をいい、 変動費 とは、 操業度 の増減に応じて比例的に増減する原価要素をいう。
ある範囲内の操業度の変化は固定的であり、これをこえると急増し、再び固定化する原価要素たとえば監督者給料等、又は操業度が零の場合でにも一定額が発生し、同時に操業度の増加に応じて比例的に増加する原価要素たとえば電力料等は、これを 準固定費 又は 準変動費 となづける。
準固定費 又は 準変動費 は、 固定費 又は 変動費 とみなして、これをそのいずれかに帰属させるか、もしくは 固定費 と 変動費 とが 合成 されたものであると解し、これを 固定費 の部分と 変動費 とに分解する。
(五)
原価の管理可能性に基づく分類
原価の管理可能性に基づく分類とは、原価の発生が一定の 管理者層 によって管理しうるかどうかの分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを 管理可能費 と 管理不能費 とに分類する。 下級 管理者層にとって 管理不能費 であるものも、 上級 管理者層にとっては 管理可能費 となることがある。
第2節 原価の費目別分類
9 原価の費目別計算
原価の費目別計算とは、一定期間における原価要素を 費目別 に分類測定する手続をいい、 財務会計 における費用計算であると同時に、原価計算における 第一次 の計算段階である。
10 費目別計算における原価要素の分類
費目別計算においては、原価要素を、原則として、 形態別分類 を基礎とし、これを直接費と間接費とに大別し、さらに必要に応じ 機能別分類 を加味して、たとえば次のように分類する。
直接費
直接材料費
主要材料費(原料費)
買入部品費
直接労務費
直接賃金(必要ある場合には作業種類別に細分する。)
直接経費
外注加工費
間接費
間接材料費
補助材料費
工場消耗品費
消耗工具器具備品費
間接労務費
間接作業賃金
間接工賃金
手待賃金
休業賃金
給料
従業員賞与手当
退職給与引当金繰入額
福利費(健康保険料負担金等)
間接経費
福利施設負担額
厚生費
減価償却費
賃借料
保険料
修繕料
電力料
ガス代
水道料
租税公課
旅費交通費
通信費
保管料
たな卸減耗費
雑費
間接経費は、原則として形態別に分類するが、必要に応じ修繕費、運搬費等の 複合費 を設定することができる。
11 材料費計算
(一)
直接材料費、補助材料費等であって、 出入記録 を行なう材料に関する原価は、各種の材料につき原価計算期間における 実際の消費量 に、その 消費価格 を乗じて計算する。
(二)
材料の 実際の消費量 は、原則として 継続記録法 によって計算する。ただし、材料であって、その消費量を 継続記録法 によって計算することが困難なもの又はその必要のないものについては、 たな卸計算法 を適用することができる。
(三)
材料の消費価格は、原則として 購入原価 をもって計算する。
同種材料の 購入原価 が異なる場合、その消費価格の計算は、次のような方法による。
1
先入先出法
2
移動平均法
3
総平均法
4
後入先出法
5
個別法
材料の消費価格は、必要ある場合には、 予定価格 等をもって計算することができる。
(四)
材料の購入原価は、原則として 実際 の購入原価とし、次のいずれかの金額によって計算する。
1
購入代価 に買入手数料、引取運賃、荷役費、保険料、関税等材料買入に要した 引取費用 を加算した金額
2
購入代価 に 引取費用 ならびに購入事務、検収、整理、選別、手入、保管等に要した費用( 引取費用 と合わせて以下これを「 材料副費 」という。)を加算した金額。ただし、必要ある場合には、 引取費用 以外の材料副費の一部を 購入代価 に加算しないことができる。
購入代価に加算する材料副費の 一部又は全部 は、これを 予定配賦率 によって計算することができる。 予定配賦率 は、一定期間の材料副費の予定総額を、その期間における材料の予定購入代価又は予定購入数量の総額をもって除して算定する。ただし、購入事務費、検収費、整理費、選別費、手入費、保管費等については、それぞれに適当な 予定配賦率 を設定することができる。
材料副費の一部を 材料の購入原価 に算入しない場合には、これを 間接経費 に属する項目とし又は 材料費 に配賦する。
購入した材料に対して値引又は割戻等を受けたときは、これを材料の 購入原価 から控除する。ただし、値引又は割戻等が 材料消費後 に判明した場合には、これを 同種材料 の 購入原価 から控除し、値引又は割戻等を受けた材料が判明しない場合には、これを当期の 材料副費 等から控除し、又はその他適当な方法によって処理することができる。
材料の購入原価は、必要ある場合には、 予定価格 等をもって計算することができる。
他工場からの 振替製品 の受入価格は、必要ある場合には、 正常市価 によることができる。
(五)
間接材料費であって、工場消耗品、消耗工具器具備品等、継続記録法又はたな卸計算法による 出入記録 を行わないものの原価は、原則として当該原価計算期間における 買入額 をもって計算する。
12 労務費計算
(一)
直接賃金等であって、作業時間又は作業量の測定を行なう労務費は、 実際 の作業時間又は作業量に賃率を乗じて計算する。賃率は、 実際 の個別賃率又は、職場もしくは作業区分ごとの 平均賃率 による。 平均賃率 は、必要ある場合には、 予定平均賃率 をもって計算することができる。
直接賃金等は、必要ある場合には、当該原価計算期間の負担に属する 要支払額 をもって計算することができる。
(二)
間接労務費であって、間接工賃金、給料、賞与手当等は、原則として当該原価計算期間の負担に属する 要支払額 をもって計算する。
13 経費計算
(一)
経費は、原則として当該原価計算期間の 実際 の発生額をもって計算する。ただし、必要ある場合には、 予定価格 又は 予定額 をもって計算することができる。
(二)
減価償却費、不動産賃借料等であって、数ヶ月分を一時に総括的に計算し又は支払う経費については、これを 月割り計算 する。
(三)
電力料、ガス代、水道料等であって、消費量を 計量 できる経費については、その実際消費量に基づいて計算する。
14 費目別計算における予定価格等の適用
費目別計算において一定期間における原価要素の発生を測定するに当たり、予定価格等を適用する場合には、これをその適用される期間における 実際価格 にできる限り近似させ、価格差異をなるべく 僅少 にするように定める。
第3節 原価の部門別計算
15 原価の部門別計算
原価の部門別計算とは、 費目別計算 においては握された原価要素を、 原価部門別 に分類集計する手続をいい、原価計算における 第二次 の計算段階である。
16 原価部門の設定
原価部門とは、原価の発生を 機能 別、 責任区分 別に管理するとともに、 製品 原価の計算を正確にするために、原価要素を分類集計する 計算組織上 の区分をいい、これを諸 製造部門 と諸 補助部門 とに分ける。製造および補助の諸部門は、次の基準により、かつ、経営の特質に応じて適当にこれを区分設定する。
(一)
製造部門
製造部門とは、直接製造作業の行なわれる部門をいい、製品の種類別、製品生成の段階、製造活動の種類別等にしたがって、これを各種の部門又は工程に分ける。たとえば機械製作工場における鋳造、鍛造、機械加工、組立等の各部門はその例である。
副産物の加工、包装品の製造等を行なういわゆる副経営は、これを製造部門とする。
製造に関する諸部門は、必要ある場合には、さらに機械設備の種類、作業区分等にしたがって、これを各小工程又は各作業単位に細分する。
(二)
補助部門
補助部門とは、製造部門に対して補助的関係にある部門をいい、これを補助経営部門と工場管理部門とに分け、さらに機能の種類別等にしたがって、これを各種の部門に分ける。
補助経営部門とは、その事業の目的とする製品の生産に直接関与しないで、自己の製品又は用役を製造部門に提供する諸部門をいい、たとえば動力部、修繕部、運搬部、工具製作部、検査部等がそれである。
工具製作、修繕、動力等の補助経営部門が相当の規模となった場合には、これを独立の経営単位とし、計算上製造部門として取り扱う。
工場管理部門とは、管理的機能を行なう諸部門をいい、たとえば材料部、労務部、企画部、試験研究部、工場事務部等がそれである。
17 部門個別費と部門共通費
原価要素は、これを原価部門に分類集計するに当たり、当該部門において発生したことが 直接的 に認識されるかどうかによって、 部門個別費 と 部門共通費 とに分類する。
部門個別費 は、原価部門における発生額を直接に当該部門に 賦課 し、 部門共通費 は、原価要素別に又はその性質に基づいて分類された原価要素群別にもしくは一括して、適当な 配賦基準 によって関係各部門に 配賦 する。 部門共通費 であって工場全般に関して発生し、適当な 配賦基準 の得がたいものは、これを 一般費 とし、 補助部門費 として処理することができる。
18 部門別計算の手続き
(一)
原価要素の全部又は一部は、まずこれを各 製造部門 および 補助部門 に賦課又は配賦する。この場合、部門に集計する原価要素の範囲は、製品原価の 正確な計算 および 原価管理 の必要によってこれを定める。たとえば、個別原価計算においては、製造間接費のほか、 直接労務費 をも製造部門に集計することがあり、総合原価計算においては、すべての 製造原価要素 又は 加工費 を 製造部門 に集計することがある。
各部門に集計された原価要素は、必要ある場合には、これを変動費と固定費又は管理可能費と管理不能費とに区分する。
(二)
次いで 補助部門費 は、直接配賦法、階梯式配賦法、相互配賦等にしたがい、適当な配賦基準によって、これを各 製造部門 に配賦し、 製造部門費 を計算する。
一部の補助部門費は、必要ある場合には、これを製造部門に配賦しないで直接に製品に配賦することができる。
(三)
製造部門 に集計された原価要素は、必要に応じさらにこれをその部門における 小工程又は作業単位 に集計する。この場合、 小工程又は作業単位 には、その 小工程等 において管理可能の原価要素又は 直接労務費 のみを集計し、そうでないものは共通費および他部門配賦費とする。
第4節 原価の製品別計算
19 原価の製品別計算および原価単位
原価の製品別計算とは、原価要素を一定の 製品単位 に集計し、単位製品の 製造原価 を算定する手続をいい、原価計算における 第三次 の計算段階である。
製品別計算のためには、原価を集計する一定の製品単位すなわち 原価単位 を定める。 原価単位 は、これを個数、時間数、 度量衡単位 等をもって示し、業種の特質に応じて適当に定める。
20 製品別計算の形態
製品別計算は、経営における生産形態の種類別に対応して、これを次のような類型に区分する。
(一)
単純 総合原価計算
(二)
等級別 総合原価計算
(三)
組別 総合原価計算
(四)
個別原価計算
21 単純総合原価計算
単純総合原価計算は、同種製品を 反復連続的 に生産する生産形態に適用する。単純総合原価計算にあっては、一原価計算期間(以下これを「一期間」という。)に発生したすべての原価要素を集計して 当期製造費用 を求め、これに期首仕掛品原価を加え、この合計額(以下これを「 総製造費用 」という。)を、完成品と期末仕掛品とに分割計算することにより、 完成品総合原価 を計算し、これを製品単位に 均分 して単位原価を計算する。
22 等級別総合原価計算
等級別総合原価計算は、 同一工程 において、 同種製品 を連続生産するが、その製品を形状、大きさ、品位等によって 等級に区別 する場合に適用する。
等級別総合原価計算にあっては、各 等級製品 について適当な 等価係数 を定め、一期間における 完成品 の総合原価又は一期間の 製造費用 を 等価係数 に基づき 各等級製品 にあん分してその製品原価を計算する。
等価係数 の算定およびこれに基づく 等級製品 原価の計算は、次のいずれかの方法による。
(一)
各 等級製品 の重量、長さ、面積、純分度、熱量、硬度等 原価の発生と関連 ある製品の諸性質に基づいて 等価係数 を算定し、これを各 等級製品 の一期間における生産量に乗じた 積数 の比をもって、一期間の 完成品 の総合原価を一括的に各 等級製品 にあん分してその製品原価を計算し、これを製品単位に 均分 して単位原価を計算する。
(二)
一期間の 製造費用 を構成する各 原価要素 につき、又はその性質に基づいて分類された数個の 原価要素 群につき、各 等級製品 の標準材料消費量、標準作業時間等 各原価要素 又は 原価要素 群の発生と関連ある 物量的数値 等に基づき、それぞれの 等価係数 を算定し、これを各 等級製品 の一期間における生産量に乗じた 積数 の比をもって、各 原価要素 又は 原価要素 群をあん分して、各 等級製品 の一期間の 製造費用 を計算し、この 製造費用 と各 等級製品 の期首仕掛品原価とを、当期における各 等級製品 の 完成品 とその 期末仕掛品 とに分割することにより、当期における各 等級製品 の総合原価を計算し、これを製品単位に 均分 して単位原価を計算する。
この場合、 原価要素 別又は 原価要素 群別に定めた 等価係数 を個別的に適用しないで、各 原価要素 又は 原価要素 群の重要性を加味して総括し、この総括的 等価係数 に基づいて、一期間の 完成品 の総合原価を一括的に各 等級製品 にあん分して、その製品原価を計算することができる。
23 組別総合原価計算
組別総合原価計算は、 異種製品 を 組別に連続生産する生産形態に適用する。
組別総合原価計算にあっては、一期間の製造費用を 組直接費 と 組間接費 又は原料費と加工費とに分け、 個別原価計算 に準じ、 組直接費 又は原料費は、各組の製品に賦課し、 組間接費 又は加工費は、適当な配賦基準により各組に配賦する。次いで一期間における 組別 の製造費用と期首仕掛品原価とを、当期における 組別 の完成品とその期末仕掛品とに分割することにより、当期における 組別 の完成品総合原価を計算し、これを製品単位に 均分 して単位原価を計算する
24 総合原価計算における完成品総合原価と期末仕掛品原価
単純総合原価計算、等級別総合原価計算および組別総合原価計算は、いずれも原価集計の単位が 期間生産量 であることを特質とする。すなわち、いずれも 継続製造指図書 に基づき、一期間における生産量について 総製造費用 を算定し、これを 期間生産量 に分割負担させることによって完成品総合原価を計算する点において共通する。したがって、これらの原価計算を 総合原価計算 の形態と総称する。
総合原価計算における完成品総合原価と期末仕掛品原価は、次の手続により算定する。
(一)
まず、当期製造費用および期首仕掛品原価を、原則として 直接材料費 と 加工費 とに分け、期末仕掛品の 完成品換算量 を 直接材料費 と 加工費 とについて算定する。
期末仕掛品の 完成品換算量 は、直接材料費については、期末仕掛品に含まれる 直接材料消費量 の完成品に含まれるそれに対する 比率 を算定し、これを 期末仕掛品現在量 に乗じて計算する。加工費については、期末仕掛品の 仕上り程度 の完成品に対する 比率 を算定し、これを 期末仕掛品現在量 に乗じて計算する。
(二)
次いで、当期製造費用および期首仕掛品原価を、次のいずれかの方法により、完成品と期末仕掛品とに分割して、完成品総合原価と期末仕掛品原価とを計算する。
1
当期の直接材料費総額(期首仕掛品および当期製造費用中に含まれる直接材料費の合計額)および当期の加工費総額(期首仕掛品および当期製造費用中に含まれる加工費の合計額)を、それぞれ 完成品数量 と期末仕掛品の 完成品換算量 との比により完成品と期末仕掛品とにあん分して、それぞれ両者に含まれる直接材料費と加工費とを算定し、これをそれぞれ合計して完成品総合原価および期末仕掛品原価を算定する( 平均 法)。
2
期首仕掛品原価は、すべてこれを 完成品 の原価に算入し、当期製造費用を、 完成品数量 から期首仕掛品の 完成品換算量 を差し引いた数量と期末仕掛品の 完成品換算量 との比により、完成品と期末仕掛品とにあん分して完成品総合原価および期末仕掛品原価を算定する( 先入先出 法)。
3
期末仕掛品の完成品換算量のうち、期首仕掛品の完成品換算量に相当する部分については、期首仕掛品原価をそのまま適用して評価し、これを超過する期末仕掛品の完成品換算量と完成品数量との比により、当期製造費用を期末仕掛品と完成品とにあん分し、期末仕掛品に対してあん分された額と期首仕掛品原価との合計額をもって、期末仕掛品原価とし、完成品にあん分された額を完成品総合原価とする(後入先出法)。
4
前三号の方法において、加工費について期末仕掛品の完成品換算量を計算することが困難な場合には、当期の加工費総額は、すべてこれを完成品に負担させ、期末仕掛品は、直接材料費のみをもって計算することができる。
5
期末仕掛品は、必要ある場合には、 予定原価 又は 正常原価 をもって評価することができる。
6
期末仕掛品の数量が毎期ほぼ等しい場合には、総合原価の計算上これを 無視 し、 当期製造費用 をもってそのまま完成品総合原価とすることができる
25 工程別総合原価計算
総合原価計算において、製造工程が二以上の連続する工程に分けられ、工程ごとに その工程製品の総合原価 を計算する場合(この方法を「 工程別総合原価計算 」という。)には、一工程から次工程へ振り替えられた 工程製品の総合原価 を、 前工程費 又は 原料費 として次工程の製造費用に加算する。この場合、工程間に振り替えられる工程製品の計算は、 予定原価 又は 正常原価 によることができる。
26 加工費工程別総合原価計算
原料がすべて 最初の工程 の始点で投入され、その後の工程では、単にこれを 加工 するにすぎない場合には、各工程別に一期間の 加工費 を集計し、それに原料費を加算することにより、完成品総合原価を計算する。この方法を 加工費 工程別総合原価計算( 加工費 法)という。
27 仕損および減損の処理
総合原価計算においては、仕損の費用は、原則として、特別に 仕損費 の費目を設けることをしないで、これをその期の 完成品 と 期末仕掛品 とに負担させる。
加工中に蒸発、粉散、ガス化、煙化等によって生ずる原料の 減損 の処理は、 仕損 に準ずる。
28 副産物等の処理と評価
総合原価計算において、副産物が生ずる場合には、その価額を算定して、これを 主産物 の総合原価から控除する。副産物とは、 主産物 の製造過程から 必然 に派生する物品をいう。
副産物の価額は、次のような方法によって算定した額とする。
(一)
副産物で、そのまま外部に売却できるものは、 見積売却価額 から販売費および一般管理費又は販売費、一般管理費および通常の 利益 の見積額を控除した額。
(二)
副産物で、加工の上売却できるものは、加工製品の見積売却価額から 加工費 、販売費および一般管理費又は 加工費 、販売費、一般管理費および通常の 利益 の見積額を控除した額。
(三)
副産物で、そのまま 自家消費 されるものは、これによって 節約 されるべき物品の 見積購入価額
(四)
副産物で、加工の上 自家消費 されるものは、これによって 節約 されるべき物品の 見積購入価額 から 加工費 の見積額を控除した額
軽微 な副産物は、前項の手続によらないで、これを売却して得た収入を、 原価計算外 の収益とすることができる。
作業くず 、 仕損品 等の処理および評価は、副産物に準ずる。
29 連産品の計算
連産品 とは、同一工程において同一原料から生産される 異種 の製品であって、相互に 主副 を明確に区別できないものをいう。 連産品 の価額は、 連産品 の 正常市価 等を基準として定めた 等価係数 に基づき、一期間の総合原価を 連産品 にあん分して計算する。この場合、 連産品 で、加工の上 売却 できるものは、加工製品の 見積売却価額 から 加工費 の見積額を控除した額をもって、その 正常市価 とみなし、 等価係数 算定の基礎とする。ただし、必要ある場合には、 連産品 の一種又は数種の価額を 副産物 に準じて計算し、これを一期間の総合原価から控除した額をもって、他の 連産品 の価額とすることができる。
30 総合原価計算における直接原価計算
総合原価計算において、必要ある場合には、一期間における製造費用のうち、 変動直接費 および 変動間接費 のみを部門に集計して部門費を計算し、これに期首仕掛品を加えて完成品と期末仕掛品とにあん分して製品の 直接原価 を計算し、 固定費 を製品に集計しないことができる。
この場合、 会計年度末 においては、当該会計期間に発生した 固定費 額は、これを期末の 仕掛品 および 製品 と当年度の 売上品 とに配賦する。
31 個別原価計算
個別原価計算は、 種類 を異にする製品を 個別的 に生産する生産形態に適用する。
個別原価計算にあっては、 特定製造指図書 について個別的に直接費および間接費を集計し、 製品原価 は、これを当該指図書に含まれる製品の 生産完了時 に算定する。
経営の目的とする製品の生産に際してのみでなく、 自家用 の建物、機械、工具等の製作又は修繕、試験研究、試作、仕損品の 補修 、仕損による 代品 の製作等に際しても、これを特定指図書を発行して行なう場合は、個別原価計算の方法によってその原価を算定する。
32 直接費の賦課
個別原価計算における 直接費 は、発生のつど又は定期に整理分類して、これを当該 指図書 に 賦課 する。
(一)
直接材料費は、当該 指図書 に関する 実際 消費量に、その消費価格を乗じて計算する。消費価格の計算は、第二節一一の(三)に定めるところによる。
自家生産材料の消費価格は、 実際 原価又は 予定 価格等をもって計算する。
(二)
直接労務費は、当該 指図書 に関する 実際 の作業時間又は作業量に、その賃率を乗じて計算する。賃率の計算は、第二節一二の(一)に定めるところによる。
(三)
直接経費は、原則として当該 指図書 に関する 実際 発生額をもって計算する。
33 間接費の配賦
(一)
個別原価計算における間接費は、原則として 部門間接費 として各指図書に 配賦 する。
(二)
間接費は、原則として 予定配賦率 をもって各指図書に 配賦 する。
(三)
部門間接費の 予定配賦率 は、一定期間における各部門の間接費 予定額 又は各部門の固定間接費 予定額 および変動間接費 予定額 を、それぞれ同期間における当該部門の 予定配賦基準 をもって除して算定する。
(四)
一定期間における各部門の間接費 予定額 又は各部門の固定間接費 予定額 および変動間接費 予定額 は、次のように計算する。
1
まず、間接費を 固定費 および 変動費 に分類して、過去におけるそれぞれの原価要素の実績をは握する。この場合、間接費を 固定費 と 変動費 とに分類するためには、間接費要素に関する各費目を調査し、費目によって 固定費 又は 変動費 のいずれかに分類する。 準固定費 又は 準変動費 は、実際値の変化の調査に基づき、これを 固定費 又は 変動費 とみなして、そのいずれかに帰属させるか、もしくはその 固定費 部分および 変動費 率を測定し、これを 固定費 と 変動費 とに分解する。
2
次に、将来における 物価の変動予想 を考慮して、これに修正を加える。
3
さらに 固定費 は、設備計画その他 固定費 に影響する計画の変更等を考慮し、 変動費 は、製造条件の変更等 変動費 に影響する条件の変化を考慮して、これを修正する。
4
変動費 は、 予定操業度 に応ずるように、これを算定する。
(五)
予定配賦率の計算の基礎となる 予定操業度 は、原則として、一年又は一会計期間において 予期 される操業度であり、それは、技術的に達成可能な 最大操業度 ではなく、この期間における 生産 ならびに 販売 事情を考慮して定めた操業度である。
操業度は、原則として直接作業時間、機械運転時間、生産数量等 間接費の発生と関連ある 適当な 物量基準 によって、これを表示する。
操業度は、原則としてこれを各 部門 に区分して測定表示する。
(六)
部門間接費の各 指図書 への配賦額は、各 製造部門 又はこれを細分した各小工程又は各作業単位別に、次のいずれかによって計算する。
1
間接費 予定配賦率 に、各指図書に関する 実際 の配賦基準を乗じて計算する。
2
固定間接費 予定配賦率 および変動間接費 予定配賦率 に、それぞれ各指図書に関する 実際 の配賦基準を乗じて計算する。
(七)
一部の補助部門費を製造部門に配賦しないで、直接に 指図書 に配賦する場合には、そのおのおのにつき適当な基準を定めてこれを配賦する。
34 加工費の配賦
個別原価計算において、労働が 機械作業 と密接に結合して総合的な作業となり、そのため製品に賦課すべき直接労務費と 製造間接費 とを分離することが困難な場合その他必要ある場合には、加工費について 部門別計算 を行ない、 部門加工費 を各指図書に配賦することができる。 部門加工費 の指図書への配賦は、原則として 予定配賦率 による。予定加工費配賦率の計算は、予定 間接費 配賦率の計算に準ずる。
35 仕損費の計算および処理
個別原価計算において、仕損が発生する場合には、原則として次の手続により 仕損費 を計算する。
(一)
仕損が補修によって回復でき、補修のために補修指図書を発行する場合には、 補修指図書 に集計された製造原価を 仕損費 とする。
(二)
仕損が補修によって回復できず、代品を製作するために新たに製造指図書を発行する場合において
1
旧製造指図書の全部が仕損となったときは、 旧製造指図書 に集計された製造原価を 仕損費 とする。
2
旧製造指図書の一部が仕損となったときは、 新製造指図書 に集計された製造原価 を 仕損費 とする。
(三)
仕損の補修又は代品の製作のために別個の指図書を発行しない場合には、仕損の 補修 等に要する製造原価を見積ってこれを 仕損費 とする。
前記(二)又は(三)の場合において、仕損品が 売却価値 又は 利用価値 を有する場合には、その 見積額 を控除した額を 仕損費 とする。
軽微 な仕損については、仕損費を計上しないで、単に仕損品の見積売却価額又は見積利用価額を、当該製造指図書に集計された製造原価から控除するにとどめることができる。
仕損費の 処理 は、次の方法のいずれかによる。
(一)
仕損費の実際発生額又は見積額を、当該 指図書 に賦課する。
(二)
仕損費を間接費とし、これを仕損の 発生部門 に賦課する。この場合、間接費の 予定配賦率 の計算において、当該製造部門の予定間接費額中に、 仕損費 の予定額を算入する。
36 作業くずの処理
個別原価計算において、作業くずは、これを 総合原価計算 の場合に準じて評価し、その 発生部門 の部門費から控除する。ただし、必要ある場合には、これを当該製造指図書の 直接材料費 又は 製造原価 から控除することができる。
第5節 販売費および一般管理費の計算
37 販売費および一般管理費の分類基準
販売費および一般管理費の要素を分類する基準は、次のようである。
(一)
形態別分類
販売費および一般管理費の要素は、この分類基準によって、たとえば、給料、賃金、消耗品費、減価償却費、賃借料、保険料、修繕料、電力料、租税公課、運賃、保管料、旅費交通費、通信費、広告料等にこれを分類する。
(二)
機能別分類
販売費および一般管理費の要素は、この分類基準によって、たとえば、広告宣伝費、出荷運送費、倉庫費、掛売集金費、販売調査費、販売事務費、企画費、技術研究費、経理費、重役室費等にこれを分類する。
この分類にさいしては、当該機能について発生したことが直接的に認識される要素を、は握して集計する。たとえば広告宣伝費には、広告宣伝係員の給料、賞与手当、見本費、広告設備減価償却費、新聞雑誌広告料、その他の広告料、通信費等が集計される。
(三)
直接費 と 間接費
販売費および一般管理費の要素は、販売品種等の区別に関連して、これを直接費と間接費とに分類する。
(四)
固定費と変動費
(五)
管理可能費と管理不能費
38 販売費および一般管理費の計算
販売費および一般管理費は、原則として、 形態別分類 を基礎とし、これを 直接費 と 間接費 とに大別し、さらに必要に応じ機能別分類を加味して分類し、一定期間の発生額を計算する。その計算は、 製造原価の費目別 計算に準ずる。
39 技術研究費
新製品又は 新技術 の開拓等の費用であって 企業全般 に関するものは、必要ある場合には、 販売費および一般管理費 と区別し別個の項目として記載することができる。
第3章 標準原価の計算
40 標準原価算定の目的
標準原価算定の目的としては、おおむね次のものをあげることができる。
(一)
原価管理 を効果的にするための 原価の標準 として標準原価を設定する。これは標準原価を設定する最も重要な目的である。
(二)
標準原価は、 真実の原価 として仕掛品、製品等の たな卸資産価額 および 売上原価 の算定の基礎となる。
(三)
標準原価は、 予算 とくに 見積財務諸表 の作成に、 信頼しうる基礎 を提供する。
(四)
標準原価は、これを 勘定組織 の中に組み入れることによって、記帳を 簡略化 し、じん速化する。
41 標準原価の算定
標準原価 は、直接材料費、直接労務費等の直接費および製造間接費について、さらに 製品原価 について算定する。
原価要素 の標準は、原則として 物量標準 と 価格標準 との両面を考慮して算定する。
(一)
標準直接材料費
1
標準直接材料費は、直接材料の 種類 ごとに、製品単位当たりの 標準消費量 と 標準価格 とを定め、両者を乗じて算定する。
2
標準消費量 については、製品の生産に必要な各種素材、部品等の種類、品質、加工の方法および順序等を定め、 科学的 、 統計的 調査により製品単位当たりの各種材料の 標準消費量 を定める。 標準消費量 は、通常生ずると認められる程度の減損、仕損等の 消費余裕 を含む。
3
標準価格は、 予定価格 又は 正常価格 とする。
(二)
標準直接労務費
1
標準直接労務費は、直接作業の区分ごとに、製品単位当たりの直接作業の 標準時間 と 標準賃率 とを定め、両者を乗じて算定する。
2
標準直接作業時間については、製品の生産に必要な作業の種類別、使用機械工具、作業の方法および順序、各作業に従事する労働の等級等を定め、 作業 研究、 時間 研究その他経営の実情に応ずる 科学的 、 統計的 調査により製品単位当たりの各区分作業の標準時間を定める。標準時間は、通常生ずると認められる程度の疲労、身体的必要、手待等の 時間的余裕 を含む。
3
標準賃率は、 予定賃率 又は 正常賃率 とする。
(三)
製造間接費の標準
製造間接費の標準は、これを 部門別 (又はこれを細分した作業単位別、以下これを「部門」という。)に算定する。 部門別 製造間接費の標準とは、一定期間において各部門に発生すべき製造間接費の 予定額 をいい、これを部門間接費予算として算定する。その算定方法は、第二章第四節三三の(四)に定める 実際原価 の計算における 部門別計算 の手続に準ずる。部門間接費予算は、 固定予算 又は 変動予算 として設定する。
1
固定予算
製造間接費予算を、予算期間において予期される一定の 操業度 に基づいて算定する場合に、これを 固定予算 となづける。各 部門別 の 固定予算 は、一定の限度内において 原価管理 に役立つのみでなく、製品に対する 標準間接費配賦率 の算定の基礎となる。
2
変動予算
製造間接費の 管理 をさらに有効にするために、 変動予算 を設定する。 変動予算 とは、製造間接費予算を、予算期間に予期される範囲内における種々の 操業度 に対応して算定した予算をいい、実際間接費額を当該 操業度 の予算と比較して、部門の 業績 を 管理 することを可能にする。
変動予算 の算定は、 実査法 、 公式法 等による。
(1)
実査法 による場合には、一定の基準となる 操業度 (以下これを「 基準操業度 」という。)を中心として、予期される範囲内の種々の 操業度 を、一定間隔に設け、各 操業度 に応ずる複数の製造間接費予算をあらかじめ算定列記する。この場合、各 操業度 に応ずる間接費予算額は、個々の間接費項目につき、各 操業度 における額を個別的に 実査 して算定する。この変動予算における基準操業度は、固定予算算定の基礎となる操業度である。
(2)
公式法 による場合には、製造間接費要素を第二章第四節三三の(四)に定める方法により 固定費 と 変動費 とに分け、 固定費 は、 操業度 の増減にかかわりなく一定とし、 変動費 は、 操業度 の増減との関連における各 変動費 要素又は 変動費 要素群の 変動費 率をあらかじめ測定しておき、これにそのつどの 関係操業度 を乗じて算定する。
(四)
標準製品原価
標準製品原価 は、製品の一定単位につき標準直接材料費、標準直接労務費等を集計し、これに標準間接費配賦率に基づいて算定した標準間接費配賦額を加えて算定する。標準間接費配賦率は 固定予算 算定の基礎となる 操業度 ならびにこの 操業度 における標準間接費を基礎として算定する。
標準原価計算において加工費の配賦計算を行なう場合には、 部門加工費 の標準を定める。その算定は、 製造間接費 の標準の算定に準ずる。
42 標準原価の改訂
標準原価は、 原価管理 のためにも、 予算編成 のためにも、また、 たな卸資産価額 および 売上原価 算定のためにも、 現状 に即した標準でなければならないから、常にその 適否 を吟味し、機械設備、生産方式等生産の基本条件ならびに材料価格、賃率等に 重大な変化 が生じた場合には、 現状 に即するようにこれを 改訂 する。
43 標準原価の指示
標準原価は、一定の 文書 に表示されて原価発生について 責任 をもつ各部署に 指示 されるとともに、この種の 文書 は、標準原価会計機構における 補助記録 となる。標準原価を指示する 文書 の種類、記載事項および様式は、経営の特質によって適当に定めるべきであるが、たとえば次のようである。
(一)
標準製品原価表
標準製品原価表 とは、製造指図書に指定された製品の一定単位当たりの標準原価を構成する各種 直接材料費 の標準、作業種類別の 直接労務費 の標準および 部門別製造間接費配賦額 の標準を数量的および金額的に表示指定する 文書 をいい、必要に応じ 材料明細表 、 標準作業表 等を付属させる。
(二)
材料明細表
材料明細表 とは、製品の一定単位の生産に必要な直接材料の種類、品質、その標準消費数量等を表示指定する 文書 をいう。
(三)
標準作業表
標準作業表 とは、製品の一定単位の生産に必要な区分作業の種類、作業部門、使用機械工具、作業の内容、労働等級、各区分作業の標準時間等を表示指定する 文書 をいう。
(四)
製造間接費予算表
製造間接費予算表 は、製造間接費予算を費目別に表示指定した費目別予算表と、これをさらに部門別に表示指定した部門別予算表とに分けられ、それぞれ予算期間の総額および各月別予算額を記載する。部門別予算表において、必要ある場合には、費目を変動費と固定費又は管理可能費と管理不能費とに区分表示する。
第4章 原価差異の算定および分析
44 原価差異の算定および分析
原価差異とは実際原価計算制度において、原価の一部を 予定価格 等をもって計算した場合における原価と 実際発生額 との間に生ずる差額、ならびに標準原価計算制度において、 標準原価 と 実際発生額 との間に生ずる差額(これを「 標準差異 」となづけることがある。)をいう。
原価差異が生ずる場合には、その大きさを 算定記録 し、これを 分析 する。その目的は、原価差異を 財務会計上 適正に処理して 製品原価 および 損益 を確定するとともに、その分析結果を 各階層の経営管理者 に提供することによって、原価の 管理 に資することにある。
45 実際原価計算制度における原価差異
実際原価計算 制度において生ずる主要な原価差異は、おおむね次のように分けて算定する。
(一)
材料副費配賦差異
材料副費配賦差異とは、材料副費の 一部 又は 全部 を予定配賦率をもって材料の 購入原価 に算入することによって生ずる原価差異をいい、一期間におけるその材料副費の配賦額と実際額との差額として算定する。
(二)
材料受入価格差異
材料受入価格差異とは、材料の 受入価格 を 予定価格 等をもって計算することによって生ずる原価差異をいい、一期間におけるその材料の受入金額と 実際受入金額 との差額として算定する。
(三)
材料消費価格差異
材料消費価格差異とは、材料の 消費価格 を 予定価格 等をもって計算することによって生ずる原価差異をいい、一期間におけるその 材料費額 と 実際発生額 との差額として計算する。
(四)
賃率差異
賃率差異とは、労務費を 予定賃率 をもって計算することによって生ずる原価差異をいい、一期間におけるその 労務費額 と 実際発生額 との差額として算定する。
(五)
製造間接費配賦差異
製造間接費配賦差異とは、製造間接費を 予定配賦率 をもって製品に配賦することによって生ずる原価差異をいい、一期間におけるその製造間接費の 配賦額 と 実際額 との差額として算定する。
(六)
加工費配賦差異
加工費配賦差異とは、 部門加工費 を 予定配賦率 をもって製品に配賦することによって生ずる原価差異をいい、一期間におけるその加工費の 配賦額 と 実際額 との差額として算定する。
(七)
補助部門費配賦差異
補助部門費配賦差異とは、補助部門費を 予定配賦率 をもって 製造部門 に配賦することによって生ずる原価差異をいい、一期間におけるその補助部門費の 配賦額 と 実際額 との差額として算定する。
(八)
振替差異
振替差異とは、工程間に振り替えられる 工程製品 の価額を 予定原価 又は 正常原価 をもって計算することによって生ずる原価差異をいい、一期間におけるその工程製品の 振替価額 と 実際額 との差額として算定する。
46 標準原価計算制度における原価差異
標準原価計算制度 において生ずる主要な原価差異は、材料受入価額、直接材料費、直接労務費および製造間接費のおのおのにつき、おおむね次のように算定分析する。
(一)
材料受入価格差異
材料受入価格差異とは、材料の受入価格を 標準価格 をもって計算することによって生ずる原価差異をいい、標準受入価格と実際受入価格との差異に、 実際受入数量 を乗じて算定する。
(二)
直接材料費差異
直接材料費差異とは、標準原価による直接材料費と直接材料費の実際発生額との差額をいい、これを材料種類別に 価格差異 と 数量差異 とに分析する。
1
価格差異とは、材料の 標準消費価格 と 実際消費価格 との差異に基づく直接材料費差異をいい、直接材料の 標準消費価格 と 実際消費価格 との差異に、 実際消費数量 を乗じて算定する。
2
数量差異とは、材料の 標準消費数量 と 実際消費数量 との差異に基づく直接材料費差異をいい、直接材料の 標準消費数量 と 実際消費数量 との差異に、 標準消費価格 を乗じて算定する。
(三)
直接労務費差異
直接労務費差異とは、標準原価による直接労務費と直接労務費の実際発生額との差額をいい、これを部門別又は作業種類別に 賃率差異 と 作業時間差異 とに分析する。
1
賃率差異とは、 標準賃率 と 実際賃率 との差異に基づく直接労務費差異をいい、 標準賃率 と 実際賃率 との差異に、 実際作業時間 を乗じて算定する。
2
作業時間差異とは、 標準作業時間 と 実際作業時間 との差額に基づく直接労務費差異をいい、 標準作業時間 と 実際作業時間 との差異に、 標準賃率 を乗じて算定する。
(四)
製造間接費差異
製造間接費差異とは、製造間接費の 標準額 と 実際発生額 との差額をいい、原則として一定期間における 部門間接費差異 として算定して、これを能率差異、操業度差異等に適当に分析する。
第5章 原価差異の会計処理
47 原価差異の会計処理
(一)
実際原価計算 制度における原価差異の処理は、次の方法による。
1
原価差異は、 材料受入価格差異 を除き、原則として当年度の 売上原価 に賦課する。
2
材料受入価格差異は、当年度の材料の 払出高 と 期末在高 に配賦する。この場合、材料の 期末在高 については、材料の適当な 種類群別 に配賦する。
3
予定価格等が 不適当 なため、比較的 多額 の原価差異が生ずる場合、直接材料費、直接労務費、直接経費および製造間接費に関する原価差異の処理は、次の方法による。
(1)
個別原価計算の場合
イ
当年度の売上原価と期末におけるたな卸資産に 指図書別に配賦する。
ロ
当年度の売上原価と期末におけるたな卸資産に 科目別に配賦する。
(2)
総合原価計算の場合
当年度の売上原価と期末におけるたな卸資産に 科目別に配賦する。
(二)
標準原価計算制度における原価差異の処理は、次の方法による。
1
数量差異 、 作業時間差異 、 能率差異 等であって 異常 な状態に基づくと認められるものは、これを 非原価項目 として処理する。
2
前記1の場合を除き、原価差異はすべて 実際原価計算 制度における処理の方法に準じて処理する。